シーン2: 大きな組織では、プロダクトオーナーの役割はどのような誤解をされがちでしょうか?

page 3 page 4 page 5 page 6 その後、大きな企業でスクラムマスターとして働き始めることになった。この時、私はチームの生産性に焦点を当てるという間違いを犯した。

スクラムは、小さな企業ではとてもうまくいった。だから大企業にも同じパターンをやってみればうまくいくはずと考えたのだ。 チームの生産性だけを考えていたから、各チームにプロダクトオーナーの役割をする人を置けばいいと思った。

だけどその中の誰も、プロダクト全体について重要なビジネス上の意思決定権限を与えられなかった。これが前の会社のプロダクトオーナー(シーン1参照)と異なる点だった。

ここでは彼らは、ただチームのデリバリーに専念しさえすればいいと思われていた。

これはスクラムとしては間違っている。私はこのプロダクトオーナーもどきのことを、企業が彼らに期待する役割そのままに「チームアウトプットオーナー」と呼んでいる。 失礼ながら、あなたの周りにも、「プロダクトオーナー」の肩書をもつ「チームアウトプットオーナー」がいるかもしれない。

チームアウトプットオーナー達には、プロダクトバックログ全体の優先事項を考える権限がない。だからその代わりに、本来スクラムには存在しないはずのチームバックログを作るしかない。これはもはやスクラムではない。

はじめのうちは、各チームが「生産的」に見えたり、アジリティが改善したようにも見えた。だけどそれは幻想だった。

「チーム内」の協働は改善したが、「チーム間」ではうまくいかなかった。 新米アジャイルコーチだった私には、「スクラム・オブ・スクラム」として知られていた方法以外なす術がなかった。 でもその大半は、プロジェクトマネージャーたちによる昔ながらの進捗確認会議に成り下がっていった。